春うらやかな5月の日中の出来事だった。
その頃の西川は今よりも遙かに水が清冽で千曲川出合から2番目の西川橋と言う木橋下のポイントは、大きなナメ底になっていて魚が走り回るのが良く見えた。
橋の上からラインをかなりのばしてフライを落とすと、そのフライめがけて数尾の良型がライズし他の魚もナメの上をざわめき、走り回る。
ドラグがかかってしまい魚は釣れなかったが、魚影の濃さに驚かされた。
その年の9月の禁漁間際にも、西川を訪れた。
友人が木橋上流のコンクリートブロックの脇で、良い釣りをしたので、私も、木橋下流にあるコンクリートブロックを狙った。
ブロックに沿った速い流れで、まず1尾、22㎝のイワナ。
だが、後が続かない。薄暗くなってきたので、このポイントを最後と決め、粘ってみることにした。
流勢から外れたブロック脇の三角点には、まだフライを落としていない。よく見るとその一番奥のスポットで小さな飛沫が上がっている。
最初は、打ち寄せる水が跳ね返って起きている飛沫かと思ったが、もっと垂直な跳ね方だ。ライズだ!
私ははやる気持を押さえて、そのスポットにロイヤルウルフの#12を落とした。ピシャッ!に合わせると、バタバタッと手元に24㎝のイワナが飛び込んで来た。
当時は、4Xのティペットを使っていたので、まるでテンカラ釣りのような取り込みである。
たった今釣れたポイントを眺めると、ふたたび全く同じ場所で、ライズが起きている。再度キャスト。
ピシャッ!バタバタッ!てな調子で今度は22㎝。
三たび変わらず起きるライズでまた1尾。
まるで、コンクリートブロック下の大きなエゴで一列に並んだイワナ達が、次々と順番にライズしているのではないかとさえ思った。
結局、一点で起こるライズで5尾のイワナを釣った後、真っ暗な橋の上から呼ぶ友人の声を聞いて、竿をたたんだ。
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